第1回「教育課程」とは

田村学教授(國學院大學)

皆さん、こんにちは。これからカリキュラム・マネジメントについて一緒に考えていきたいと思います。スタートの第1回は、よく聞く「教育課程」とは、「教育課程の基準の見直し」とは、どのようなことを意味しているのかを簡単に整理してみたいと思います。

教育課程の基準の見直し

みなさんは日本各地の小学校や中学校で授業を受け、学習をしてきたと思います。その後、高等学校に進学した人も多いことでしょう。 それぞれの学校は児童・生徒の数が違ったり、学級数が異なったり、木造の校舎もあれば、鉄筋の建物もあったと思います。学校を取り巻く地域の様子も様々だったと思います。自然豊かな地域の学校もあれば、都会の真ん中の学校もあったことでしょう。日本全国にある小学校は、およそ20000校。中学校は、10000校。高等学校は,4000校以上ありますが、それぞれの学校には特色があり、個性があります。そうした学校が、日本全国津々浦々に存在し、それぞれの学校で豊かな教育活動が行われています。

このように多様な表情をもつ学校ではありますが、どの学校でも国語や社会、算数・数学や理科といった教科の学習を行っています。道徳や総合的な学習の時間も実施されていますし、学校行事などの特別活動も行われています。各教科等で扱っている内容も日本全国共通です。北海道の学校でも、沖縄の学校でも、小学校の二年生になればかけ算九九を学習します。みなさんも二の段や五の段を暗唱したり、九九表に数字を書き込んだりしたことを憶えていることでしょう。

このように学校では、何を、どれくらい学ぶかという「教育内容」と「時間数」によって、教育課程(カリキュラム)を編成しています。この教育課程の基準を「学習指導要領」と呼び、この基準があることによって日本全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育が受けられるようになっているわけです。「学習指導要領」には、各教科等の目標や大まかな教育内容を記しています。また、「学習指導要領」とは別に、学校教育法施行規則で、例えば小・中学校の各教科等の年間の標準授業時数等が定められています。

各学校では、この「学習指導要領」や年間の標準授業時数等を踏まえ、地域や学校の実態に応じて、教育課程(カリキュラム)を編成していきます。この教育課程の基準となる「学習指導要領」を見直すことを「学習指導要領を改訂する」と言います。

学習指導要領改訂の変遷

「学習指導要領」は、戦後、試案として作成されましたが大臣の告示となって示されるようになったのは昭和33年のことです。その後、およそ10年ごとに見直され、改訂が行われてきました。これまでの改訂の特徴を文部科学省ウエブページから紹介します。

  •  昭和33~35年改訂 教育課程の基準としての性格の明確化(道徳の時間の新設、系統的な学習を重視、基礎学力の充実、科学技術教育の向上等)

  • 昭和43~45年改訂 教育内容の一層の向上(「教育内容の現代化」)(時代の進展に対応した教育内容の導入(算数における集合の導入等))

  •  昭和52~53年改訂 ゆとりのある充実した学校生活の実現 =学習負担の適正化(各教科等の目標・内容を中核的事項にしぼる)

  • 平成元年改訂 社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成(生活科の新設、道徳教育の充実等)

  • 平成10~11年改訂 基礎・基本を確実に身に付けさせ、自ら学び自ら考える力などの「生きる力」の育成 (教育内容の厳選、「総合的な学習の時間」の新設等)


この後、平成20年の改訂に続き、平成29年3月に「学習指導要領」が改訂され、告示されました。それが、現在の学習指導要領になるわけです。

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