第3回「3つの柱を基盤にした学習指導要領の構造」とは

田村学教授(國學院大學)

教育課程の基準としての学習指導要領は、育成を目指す資質・能力の三つの柱で構成されています。それは以下の三つです。

一つは、「知識及び技能」。
二つは、「思考力、判断力、表現力等」。
三つが、「学びに向かう力、人間性等」。

このような資質・能力を確かに育成することを目指して学習指導要領は改訂されました。この三本柱を基盤に学習指導要領の構造も大きく変変化しました。

まずは、教科目標です。教科目標については、全ての教科等において統一された書式で表記されています。それは、リード文と(1)「知識及び技能」、(2)「思考力、判断力、表現力等」、(3)「学びに向かう力、人間性等」です。ちなみにリード文は、一部の教科等を除いて、「見方・考え方」「資質・能力」「中心的な学習活動」の三つの要素で構成されています。このように極めて整然と整理された学習指導要領の目標です。

では、内容はどうでしょうか。一見すると、内容の表記はバラバラのように感じるかもしれません。教科目標と違って書式が統一されていないために、そのような印象を持つ方も多いようです。しかし、内容の中身を丁寧に見ていくと、きれいに整理されていることが理解できます。そして、ここでも三本柱によって構成されていることが分かります。

例えば、国語科は、最初に[知識及び技能]と示され、そこに事項が並んでいます。次に、[思考力、判断力、表現力等]とあり、そこに「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」がきます。

社会科や算数科、理科などは、似通った表現様式です。例えば、「我が国の食料生産・・・」のように扱う対象が示されます。そのことについて追究する中で、[知識及び技能][思考力、判断力、表現力等]が獲得されることを明示しています。

体育科は、「陸上運動」などの運動領域それぞれ毎に[知識及び技能][思考力、判断力、表現力等][学びに向かう力、人間性等]までが示されています。多くの教科等では、[学びに向かう力、人間性等]までは示していません。扱う学習対象が変わっても、期待する[学びに向かう力、人間性等]は大きく変わらないからかもしれません。

ちなみに低学年の生活科は、一文の中に[知識及び技能][思考力、判断力、表現力等][学びに向かう力、人間性等]が示されており、一体として学ぶ低学年の特性が表れていると考えることができます。

内容については、教科毎に違いはあるものの、三本柱で整理され、構成され、表示されていることを理解いただけると思います。

 

こうして整理された学習指導要領の下、実際の社会で活用できる資質・能力の育成に向けて、「主体的・対話的で深い学び」を実現することが期待されています。この「主体的・対話的で深い学び」を実現するためには両輪が考えられます。一つの車輪が「アクティブ・ラアーニングの視点による授業改善」です。そして、もう一つの車輪が「カリキュラム・マネジメントの充実」になります。次回以降は、この片方の車輪「カリキュラム・マネジメントの充実」について、詳しく考えていきます。