第1回「持ち帰りと家庭学習編①:配信側のICT環境を整理しよう」

株式会社エデュテクノロジー 代表取締役
阪上吉宏

はじめまして。株式会社エデュテクノロジーの阪上吉宏と申します。ご縁あって、こちらのコラムに関わらせていただくことになったこと、たいへん嬉しく思っております。

令和3年度も継続するコロナ禍、これまでは比較的児童生徒には感染しにくいと考えられていましたが、オミクロン株による第6波が学校現場を混乱させています。12月から広まりはじめた感染は速度を早め、1月には小学校を中心に感染者数急増による臨時休業が全国で発生しています。*1

私の担当するコラムでは、ICT活用の工夫に加えて、日頃の取り組みをいまだからこそ考えていただきたいという観点で批判的にふりかえってみたいと思います。これから、3つのテーマを扱わせていただきます。「持ち帰りと家庭学習」「公開研究会を工夫する」「最先端テクノロジーへの期待」です。

まずは、「持ち帰りと家庭学習。実情と提言編①:配信側のICT環境を整理しよう」です。

令和4年1月に文部科学省より公開された「持ち帰りに関する状況調査」*2によると、なんと3万の小中学校のうち95.2%が非常時に備えて持ち帰り学習の準備が整っていると発表していました。実際、私の近くでも学級閉鎖中にオンライン授業が行われていると聞くことが増えてきました。



しかしながら、十分にオンライン授業の準備期間があったわけではなく、試行錯誤をしながらまさに日々アップデートを繰り返しているのではないでしょうか。
オンライン授業で授業者が注意すべき観点は様々だと思いますが、今回は児童生徒がタブレット等を持ち帰り自宅から参加する場合に、授業者側からは気づきにくいにも関わらず、よく生じてしまうICTトラブルを取り上げてみたいと思います。

よくある授業者(配信側)のトラブル
1.音声が聞こえない。聞きづらい。
児童生徒が目の前にいないということは、支援をすることができないということですね。そのような状況で音声はもっとも重要な役割を果たすことになります。
せっかくがんばって環境を準備し、児童生徒に話しかけているにも関わらず、その肝心の音声が届いていないということは実際起こりうるのです。
たとえば、そもそもマイクがONになっていないという単純な操作ミス。あるいはマイクはONになっているのだが、周囲の雑音が入ってしまっていたり、マイクの音質が悪いなどの原因で授業者の声が児童生徒にははっきりと聞こえない。
改めて、音声とはとても重要な要素なのだと考えさせられます。
雑音混じりの音声を1コマ聞かされると、皆さんどのように思われますか?かなりしんどいですよね。
もっとも簡単な対策は、スマートフォンなどに同梱されている有線のイヤホン付きマイクを使用することです。もし声が遠いと言われるようなことがありましたら、マイクを少し口に近づけてみましょう。それだけでずいぶんと改善されるはずです。

2.板書が見えない。
続いてよくあるのがやはりカメラのトラブルです。その中でもよく耳にするのは板書が見えづらいというケースです。
タブレットPCのカメラは必ずしも高画質とは限りません。それでも児童生徒がなるべく授業にいるときと同じように黒板全体を映そうとするばかりに、チョークで書かれた文字が小さくなってしまい見えなくなる、ということがよくあります。あるいはカメラに寄って撮影したものの、板書に集中するあまり、カメラから外れてしまったのに気づかずに授業を進めてしまった、などもお聞きします。
やはり解決策としては、プレゼンスライドなどの画面共有する方法です。ですが、すべてを置き換えるのは大変ですので、そのコマでもっとも大事な部分を1枚だけでも用意してみるというところからチャレンジするのも良いかもしれませんね。プレゼンスライドは複数名で共有することができますので、同僚と一緒に作成することもできます。負担のない範囲で試してみましょう。
もしくは、それ以外の板書は、なるべく黒板の狭い範囲を使用したり、掲示した印刷物を利用することでタブレット等を動かす必要が少なくなります。
潤沢に設備が整っている教室は稀でしょう。複数クラスが一緒に授業を行うことで授業者の端末を投影用として同時に複数台利用できるようにすることもひとつの解決策です。
なお、書画カメラがある教室から配信できる場合は、プリントなどに手書きしている様子を表示することも可能です。導入されているタブレット等にどのような機器を接続することを確認し、試行錯誤を繰り返して、ご自身にとってやりやすい方法を導き出していただきたいと思います。

以上、今回は授業者目線で気をつけておきたいオンライン授業トラブル対応でした。この2つのポイントを気をつけるだけでも、まずは参加しやすいオンライン授業になると思います。
次回は、児童生徒側の環境について考えていきたいと思います。

参考文献

※1 学校関係者における新型コロナウイルス感染症の感染状況等について(令和4年2月)文部科学省、令和4年2月

※2 臨時休業等の非常時における端末の持ち帰り学習に関する準備状況調査 (令和4年1月末時点)文部科学省、令和4年1月