第1回「ICT が学校での児童の⽇常ツールにならない国、ニッポン」

WeCREATE(C領域)GIGAスクール構想領域・連載
中川⼀史 放送⼤学教授・博⼠(情報学)

これから、このWeCREATEC領域)GIGAスクール構想領域を担当することになりました放送⼤学の中川⼀史(なかがわ・ひとし)です。私は、1999 10 ⽉から2008 3⽉まで⾦沢⼤学の教員をしていました。附属⼩にも講師として関わっていたこともあります。


そのような中、こういう機会をいただき、⼤変嬉しく思います。私なりの切り⼝で、このテーマに迫っていきたいと思います。


内閣府が2020年に公開した「令和元年度 ⻘少年のインターネット利⽤環境実態調査 調査結果(概要)」によりますと、⼩学⽣のスマホ等機器の占有率は40.1%で、6 歳でインターネット利⽤率は68.9%にのぼります。また、⼩学⽣全体で、何にインターネットを使っているかというと、ゲーム(81.7%)、動画視聴(72.0%)が上位で、勉強等は31.4%です。しかし、この勉強等も、おそらく多くの場合は「家に帰ってから」でしょう。




それを裏付けるかのように、⽂部科学省・国⽴教育政策研究所が公開した「OECD ⽣徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」(2019)によりますと、⽇本は、学校の授業(国語、数学、理解)におけるデジタル機器の利⽤時間が短く、なんとOECD 加盟国中最下位だったようです。つまり、他の国では当たり前に「学校で、授業で」使っているものを⽇本では使っていないわけです。



これらのことから、「⼦どもたちは、家に帰ってからデジタル機器をよく使っているけども、学校で学習や⽣活のためのツールにはまったくなっていない」様⼦がうかがえます。
さて、どうしてこうなったのでしょうか。

たぶんこうだったんじゃないか(チコちゃんの真似)という主な理由を2つあげます。

  • たぶんこうだったんじゃないか〜その①〜「教師が優秀だった」


海外の学校を訪問して思うことは、⽇本の教師は優秀だということです。いわゆる授業の進め⽅については世界⼀なんじゃないかと思うことすらあります。ですから、これまでの教師が提⽰などのために使うICT機器を使わなくても⼗分に授業は成⽴していた。そのことが⽪⾁にもICT 機器の普及を遅れさせてきたのではないかと推測します。

  • たぶんこうだったんじゃないか〜その②〜「紐付け予算ではなかった」


これまで国が予算をつけてICT 環境整備を進めてきましたが、これは地⽅財政措置を講じてきたわけです。地⽅財政措置というのは、⾃治体の⼀般財源に⼊り、その優先順位は⾃治体が決めるものなので、国がICT環境整備のためにつけた予算だ〜!と、いくら主張しても、そこに予算が回ってこなかったことも少なくありませんでした。なので、なかなか整備が進まないだけでなく、整備の⾃治体差がついてきたのです。

昔は、家にないものが学校にありました。しかし、今や、家にあるものが学校にはないのです。端末機器もその1つです。これを打破すべく、GIGAスクール構想はスタートしまし た。GIGAスクール構想については、次回以降に!では、また。

イラスト:石橋音々